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アントニオ・マチャードをめぐって―印象派と俳句-

俳句が初めて欧米圏に紹介されはじめたのは19世紀後半で、イギリス人日本研究者のウィリアム・ジョージ・アストンやバジル・ホール・チェンバレン、そして小泉八雲らが俳句について書き残しています。また、フランス人哲学者で精神科医のポール=ルイ・クーシューもフランスにおける俳句の受容に大いに貢献しました。

スペイン語圏で俳句が知られるようになるのは20世紀初頭のことです。当時の欧米文学の中心のひとつはフランスにあり、多くのスペイン人作家たちがパリ滞在やフランスの文芸雑誌を通して最新の文学潮流に触れ、大いに刺激を受けていました。このような状況のもと、フアン・ラモン・ヒメーネス、ディエス・カネド、ゴメス・カリーリョなどのスペイン語圏の詩人たちはフランス経由で俳句を知り、スペイン語圏に紹介したり、自らスペイン語で俳句を書いたりしました。アントニオ・マチャードもそのような詩人のひとりでした。本特別講義では、マチャードにおける俳句の影響やマチャードの書いた「ハイク」についてお話していただきます。

 

*ヨーロッパやスペイン語圏における俳句の受容については以下の文献が大変参考になります。
クーシュー『明治日本の詩と戦争』金子美都子訳、みすず書房、1999年。
ゴメス・カリージョ『誇り高く、優雅な国、日本』児島桂子訳、人文書院、2001年。
田澤佳子『俳句とスペインの詩人たち―マチャード、ヒメネス、ロルカとカタルーニャの詩人』思文閣出版、2015年。
**アントニオ・マチャード(1875~1939年)

スペインの詩人。主な作品は『孤独』(1903年)、『孤独、回廊、その他の詩』(1907年)、『カスティーリャの野』(1912年)、『新しい詩』(1924年)など。マチャードの作品の主な日本語訳は以下の通りです。

マチャード、ヒメーネス、ロルカ『マチャード 寂寞/ヒメーネス 石と空/ロルカ ジプシー歌集』世界名詩集第26巻 鼓 直、荒井正道、会田由訳、平凡社、1969年。
マチャード、アルベルティ『マチャード/アルベルティ詩集』(世界現代史文庫24)、大島博光訳、土曜日術社出版販売、1997年。
マチャード『アントニオ・マチャード詩集-カスティーリャの原野、その他の詩』石田安弘編訳、国文社、2012年。

 

講師プロフィール

リカルド・デ・ラ・フエンテ先生

デ・ラ・フエンテ、リカルド(Ricardo de la Fuente)先生

バリャドリード大学(スペイン)教育学部学部長・教授。専門はスペイン文学。特に19世紀末から20世紀初頭のスペイン演劇やスペイン語文学におけるオリエンタリズムのテーマを扱い、80冊以上の著書、160本以上の論文を発表している。