研究紹介

アフリカにはおもに遊牧で生活を成り立たせている遊牧民が2億6千8百万人いると推定されています。アフリカの遊動民社会は、現在、飢饉と飢餓、低強度紛争、気候変動等の多くのリスク要因を抱えており、それに対応した新たな人道支援と開発の理論構築が求められています。

従来、彼らの社会に対しては、遊動から定住へ、生業経済から市場経済への一方向的発展プロセスを前提としたリスク回避型の開発モデルが一方的に適用されてきました。これに対して、本研究は、臨地調査研究に基づき、グローバルな領域とローカルな領域の接合状況を接合型レジリエンスとして理論化することを試みます。これにより、一方向的発展過程を、双方向的で後退可能なリスク受容型の開発モデルに転換することを試み、人道支援と開発援助の間のギャップを地域住民自身がもつレジリエンスによって克服する手法を開拓することを目的とします。

最終的に、研究成果を総括して、地域研究の立場から、アフリカ遊動民に対する従来の「開発」概念そのものを根源的に刷新することを目指します。

本研究は、本研究計画の研究代表者を研究代表者とする平成25-29年度基盤研究(A)「接合領域接近法による東アフリカ牧畜社会における緊急人道支援枠組みのローカライズ(課題番号: 25257005)(以下「前研究課題」と略記)」の後継・発展企画として計画されました。

前研究課題の研究成果は英語(S. Konaka & X. Sun (eds.) Localization of Humanitarian Assistance Frameworks for East African Pastoralists. African Study Monographs. Supplementary issue, 53)および日本語(湖中真哉・太田至・孫暁剛(編)『地域研究からみた人道支援─アフリカ遊牧民の現場から問い直す』昭和堂、2018年)で出版され、日本語の書籍は、2018年度第8回地域研究コンソーシアム賞研究作品賞、および2018年度 国際開発学会 賞選考委員会特別賞を受賞しました。